キングダム32巻「山の民の加勢」感想

~あらすじ~

開戦二日目の夜、蕞は前日同様に見せかけの夜襲を受けていたが、蕞は自軍の半数に休むように指示する。
しかし敵軍の声が響いている状況では民兵たちはとても眠ることができない。
政は、そんな民兵たちにねぎらいの言葉をかけて回っていた。
これは効果てきめんで、疲れ果てていた民兵たちの顔に、たちどころに輝きが戻った。

開戦三日目、疲れのせいで飛信隊の隊員たちの動きも鈍く、民兵たちの余力はもうないかに思われたが、昨夜の政の檄が効いており、民兵たちは敵を押し返し、李牧軍を真っ向から跳ねのけ始める。
そして三日目が過ぎ、四日目が過ぎても蕞は落ちなかった。
四日目の夜にはそれまでの見せかけのものではなく、本物の夜襲がかけられたが、それでも蕞は耐え忍んだ。

開戦五日目。
ついに疲労が限界を超えだした民兵たちは、敵の攻撃にあわずとも倒れ出し、ひとりでに死に出した。
もはやこれまでかと思われたが、ここで政が前線に躍り出て、民兵たちの戦意を復活させる。
しかし政が少年兵たちを助けようとしたとき、敵の刃が政の首筋を捉えてしまう。
信がすぐさま助けに入り、敵を切り倒したために政は一命をとりとめたがその傷は深い。
政は何とか自分で立ち上がり、治療を受けにさがったが、その顔からは血の気が失せていた。

五日目もなんとか凌ぎ、夜がやってると、蕞の本陣では昌文君が皆に頭を下げ、大王である政だけは脱出させてくれ、と頼んでいた。
蕞にはもう余力が無いのだ。
皆はこの判断を受け入れるしかなかった。
このことを、別室で横になっている政に伝える役には信が選ばれた。
もしもの時は必ず説得するように言い添えられて。

しかし案の定、政はこの判断に聞く耳を持たず、信も説得しようとはしない。
信は政が絶対に一人で脱出しようとはしないことを知っているのだ。

かくして六日目の朝を迎え、大王の凶報に士気が下がっていた蕞であったが、何故かここで士気が最高潮に達する。
見ると重症のはずの政が、秦旗を掲げて皆を鼓舞していた。
政は黄金の甲冑を身にまとい、騎馬隊を引き連れている。
その顔には笑みが浮かび余裕の様子であったが、その実、多量の出血のために意識を保っているのがやっとだった。

しかしこれにより兵の士気は保たれ、さらに飛信隊や介億の絶妙な働きによって蕞は六日目の夜を迎えることができた。

七日目。
兵数の少なくなってきた蕞は李牧軍の猛攻に耐えきれず、ついに西壁を突破されてしまう。
西の城門が解き放たれ、騎馬隊が城内になだれ込む。
もはや蕞を守る兵たちにはどうすることもできず、城内に敵が流れ込んでくることを見ているしかなかった。
絶望の淵に沈んだ秦兵たちであったが、なんとここで西の山に援軍が現れた。

楊端和率いる山の民である。

実は政は、咸陽を出発する前に楊端和に援軍要請の伝者を送っていたのであった。
しかし山の民たちは北の大勢力であるバンコとの決戦の真っ最中であったため、城にはおらず、残っていた老人たちに頼んだ言伝が唯一の希望であった。
普通に考えれば援軍には来てくれるはずも無く、望みは無いといえるが、政と信はきてくれると信じて戦い続けていたようである。
さらに山の民たちは八日の道のりを七日で駆けつけており、これは援軍要請が届いてから一目散に蕞に向かってきたことを意味する。
この山の民の行動に政や昌文君はいたく感動した。

政は援軍要請について情報が漏れないように昌文君以外には秘密にしていたため、李牧は完全に虚を突かれた形になった。
楊端和の号令で山の民たちが突撃を開始すると李牧軍は対応しきれず劣勢を強いられる。
李牧軍の目的は咸陽攻略であり、ここで仮に山の民との戦いに勝利したとしても、自軍の被害も相当なものになるため咸陽を攻略するための兵力は残らない。
李牧は退却する以外に道は無い、と判断した。

李牧は退却の指示を下そうとするが、 龐煖は楊端和の方へ向かい出す。
これを見た楊端和も 龐煖を討ち取るべく馬を走らせる。
しかしここで、ボロボロのはずの信が楊端和を制止し、龐煖の前に立ちふさがった。

龐煖の圧倒的な威圧感の前に周りの者は息をのみ、信が乗る馬(駿)でさえも恐れを抱くが、信が動じることは無い。
優しく語りかける信の声で落ち着きを取り戻した駿は、巨大な馬とそれに乗る龐煖に向けて駆け出し、いよいよ一騎討ちが始まった。

馬上の戦いを不利と見た駿は、龐煖の乗る巨馬の喉元に食らいつき、自らを犠牲にして龐煖を馬から引きずり下ろす。
これにより地上戦になったが、信は龐煖の矛による一撃であばら骨をへし折られ、吹き飛ばされてしまった。
馬陽の時と同様に、やはり龐煖にはかなわないかに思われたが信は立ち上がり、お前の刃は小石のように軽く自分には効かない、と啖呵を切る。
啖呵を切ったものの、激戦のダメージからもはや信には余力は無く、龐煖の矛を躱す力も残されていない。
この危機的状況で信は前に出ることを選び、龐煖に向けて剣を振るった。



~感想~

これ以上ないくらいに厳しい戦いでしたが、蕞はなんとか凌ぎきったようです!
民兵たちもまさに死力を尽くして戦い抜きました(;_;)
これを率いた政も加冠前の若王とは思えないリーダーシップでしたね。

李牧も三日目あたりから相当ビビっていたようで、落ちない蕞を前に「なんなのですかこの城は」と冷や汗をかいておりました(^^)
君が相手にしているのは始皇帝なのだよ、と教えてあげたい。
きっと、唖然とすると思います(^^)

しかし李牧もさすがに切れ者で、見せかけの夜襲をかけてくるところや、四日目の見せかけと思わせておいて本物の夜襲をかけてくるあたりは本当に厳しい攻めで、政以外の王が率いていたのであれば凌げなかったと思います。
昭王でさえも三万の民兵の士気をここまで高めることはできなかったのではないでしょうか。
五日目に政が前線に出てきたときなんて、ほとんど死んでいた民兵たちが再び戦い始めましたからね(^^;

前線に出てリスクをとった代償として政が首を斬られてしまった時はドキっとしましたが、大丈夫。
始皇帝が死ぬわきゃありません!
…でも出血の様子や傷の深さを見る限り、あと数ミリで「キングダム完」だったのではないでしょうか( ゚Д゚)
ちょっとだけ頸動脈を斬られてしまったように見えます。
危ねぇところだ…

そしてその後、昌文君の発案で政を逃がそうということになるのですが、政が応じるはずも無く、信も説得するつもりが無かったようですね。
個人的に関心があったのは、政の説得に失敗したことを昌文君が聞かされたときに激昂して信に殴りかかり、信がその拳をこともなげに受け止めてしまうシーンです。
もはや両者の力の差は大人と子供くらいに違うのかもしれません。
正確にいえば若者と老人。
信が強くなったな~と感じると同時に昌文君の衰えが気になるシーンでした。

蕞の攻防戦では結局、昌文君の持ち場が最初に崩れ、開門を許してしまいます。
昌文君もこれ以上ないくらいに頑張ったのですが、もはやおじいちゃんといっても良いくらいにくたびれた姿になっており、限界だったのでしょう。
介億の絶妙の采配も間に合いませんでした。

しかし、なんとここで楊端和率いる山の民が登場!(>_<)
これは予想外!
最初に読んだ時は度肝を抜かれました(^^;
正直、蕞を守り切れるのか疑問だったのですが、この手がありましたね~。
政の計略に脱帽です。
漂も政の影武者となり命を落とした甲斐があるってもんです。

さらにランカイも久しぶりの登場。
ランカイは迫力が増したのではないでしょうか。
なんだか咸陽にいた頃よりも身体がデカく見えます。
山での生活が性に合ってるとみえて元気一杯、おなじみの雄叫び(ボェェェ)も健在です。

そして龐煖が登場(T_T)
コイツが出てくるといつもロクなことになりません。

楊端和との一騎討ちは実現しませんでしたが、もし戦っていれば良い勝負になったと思います。
一騎討ちではなく、乱戦であれば討ち取っていた可能性も…
楊端和の周りを固めるのはバジオウにシュンメンといった強者ですし、龐煖は片手を痛めていますからね。

しかしやはり龐煖を討ち取るのは信がふさわしいでしょう。
それも一騎討ちが良い。
ただ、今ではないような気がします。
まだ龐煖を一騎討ちで討ち取るには早すぎるような…

~32巻のベストシーン~

これは考えるまでも無く、援軍として西の山に山の民が現れたシーン(>_<)
これはしびれました~。
第一話から今までのストーリーが全て伏線だったかのような素晴らしいオチ。
見開きで楊端和とお馴染のメンツが描かれている登場シーンは最高でした(^^)

しかも八日かかるところを七日で来てくれたとのことで、さらに感動。
自分たちも決戦の最中だったのに全てをなげうって駆け付けてくれました。
昌文君も泣いてましたね(^^)

それもこれも、始まりは四百年前に初めて山界と盟を結んでくれた穆公のおかげです。
穆公に感謝。
もう二度と秦人が山の民を裏切ることはないでしょう。


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