キングダム31巻「蕞(さい)の攻防」感想

~あらすじ~

咸陽では政が出陣したことが知れ、動揺が広がっていた。
呂不韋は政の出陣を思い切りが良すぎる、と感じ昌平君に、何か助言をしなかったか、と問いただす。
これに対し昌平君は、自分は秦軍総司令であり、今はそれ以外のことは取るに足らぬ小事です、と言い放った。

一方、南道では飛信隊を含む麃公軍の残兵たちが李牧軍の追撃をなんとか躱しながら咸陽に向かっていた。
ボロボロになった麃公軍の残兵たちは、ようやく蕞にたどり着くと、うつむいたまま城門をくぐり中へと入る。
するとそこにはピカピカの甲冑を身にまとった騎馬隊が揃っており、先頭には政の姿があった。
麃公将軍の死に打ちのめされていた信は政の姿を見て安堵し、政の肩を借りて泣いた。
信が政の前で泣いたのはこれが初めてである。

一息ついて落ち着いた信が本営に向かうと、そこでは政や河了貂たちがこれからやってくる李牧軍に対抗する策を練っていた。
しかし状況は絶望的。
蕞には千人ほどしか兵がおらず、咸陽から政が連れてきた兵と麃公軍の残兵をあわせても五千弱にしかならない。
対する李牧軍は三万強である。

しかし蕞には住民が三万ほどいるため、これを頭数に加えれば数では負けていない。
政は最初からそのつもりであり、蕞の住民を兵士と化すことが自分の役目である、と力強く言った。

政の指示で蕞の全住民が広場に集められ、政はその前に立つ。
ザワついていた蕞の住民たちであったが、自分たちの目の前に立っている人物が秦王嬴政だとわかると静まり返り、皆は畏敬の念を抱いて膝まづいた。

政は語りかける。
この蕞で敵を食い止めねば秦国は滅び、秦人は列国の奴隷となるだろう。
敵を食い止めるには蕞の住民の力が必要であり、戦えば多くの血が流れ、多くの者が命を落とすことになる。
そして自分も共に血を流すためにここに来たのだ。
これを聞いた蕞の住民たちは奮い立ち、士気は一気に最高潮に達したのであった。

さらに昌平君からの援軍として介億や蒙毅たちも到着し、準備は整った。

蕞の住民たちも武装し、皆が城壁の上で待ち構えていると、いよいよ三万の李牧軍がやって来た。
李牧は一目で一般人に武装させていることを見抜き、降伏するように説得するが、士気が高まっている蕞の住民たちはこれを跳ね返す。

そして戦が始まった。

蕞の城壁は特別に高いわけではないため、簡単に梯子をかけられてしまい、李牧軍の兵士たちは城壁の上に登って来る。
しかしこれは想定内で、信たちは城壁の上に敵が登ってきたところを攻撃し、殲滅していく。

飛信隊が守る南壁、介億たちが守る北壁、昌文君たちが守る西壁は今のところ問題は無かったが、壁たちの守る東壁は苦戦していた。
風が東から吹いており、敵に風上をとられていることで矢の打ち合いで不利になっているのだ。
敵は東壁に次々と梯子を掛けはじめ、拠点を増やしていくが、ここで壁は河了貂の指示通りに予備隊として温存しておいた麃公兵たちを投入する。
麃公兵たちは一目散に敵が築いた拠点に向かい、これを全て殲滅してしまった。

この後も一進一退の攻防が続き、ついに日暮れを迎える。
そして李牧軍は夜営のために一時退却して行ったのだった。

初日を凌いだ蕞では歓声が上がっていたが、実はこれは李牧の作戦であり、初日は全力で攻めていなかった。
李牧は軍を二つに分けるように指示し、一方を休ませ、もう一方に夜襲をかけ、大声を出して矢を射かけるように指示した。
夜襲をかけられた蕞からは暗闇の中で敵がどれくらいいるのか分からないため、昼間と同じテンションで防衛にあたるほかなく、休むことができない。
これが李牧の作戦であった。

この作戦は夜通し行われ、開戦二日目の朝を迎えると、蕞を守る兵たちは疲労のために最悪のコンディションとなっていた。
しかしそれでもなお奮戦する蕞にとどめを刺すべく、傅抵隊とカイネ隊が出陣していく。
趙軍三千人将の傅抵(ふてい)は城壁の上まで登ると、まず竜川を斬り、続いて田有もあっさりと斬ってしまった。
これに気付いた信は傅抵に斬りかかるが、傅抵の動きは速く、信でさえも捉えることができない。
劣勢に陥る信であったが、ここで信は羌瘣に教えてもらったことを思い出し、傅抵を捉えることに成功。
傅抵は弾き飛ばされ気を失った。

一方、河了貂はカイネと立ち合ったが負けてしまい、捕虜にされようとしていた。
これに気付いた信はカイネを弾き飛ばし、河了貂を救おうとする。
弾き飛ばされたカイネが城壁から落ちかけたところを河了貂が手首をつかんで助けるが、結局、引き上げることは出来ずに、カイネは城壁から落ちてしまう。
しかしカイネは下で待ち構えていた趙兵たちに受け止められ、ことなきを得た。

意識を取り戻した傅抵はカイネが落ちた様子を見て激昂し、信たちに斬りかかったが、深手を負っていた竜川が体当たりし、傅抵を城壁の外へと弾き飛ばした。
傅抵もまたカイネと同様に趙兵たちの上に落下したため無事だったようだ。

そして李牧は、休憩なしで戦っているはずの蕞が崩れないことを不思議に思い、眉をひそめていた。



~感想~

この辺りから昌平君は呂不韋に反感を抱いていたみたいですね。
昌平君は頭が良いですから、政が普通の王様ではないことに気付いていたのかもしれません。
呂不韋の問いに対して、自分は秦軍総司令であって、今はそれ以外のことは取るに足らない小事です、と応じたシーンにはかなりビックリしました。
これは、今は秦国を守ることが第一なんだから、お前(呂不韋)のいうことなんか聞いてられるか!ということですから、かなり重大な発言です。
その後も蕞に援軍として介億たちを送ってくれましたし、昌平君は芯のある男ですね。

そして介億は、その風体からオギコのようなお笑い担当かと思いきや、なんと昌平君の軍師学校の先生!
ややオカマキャラですが、頼りになりそうです。
王騎将軍もそうでしたが、キングダムには何故かオカマキャラがチョコチョコと登場します(^^;

さらに傅抵(ふてい)が初登場。
コイツは強いですね~。
力がそれほどないため田有や竜川は命拾いしたようですが、かなり危ないシーンでした。
でも憎めないキャラで、個人的には好きなキャラクターです。
楚の項翼なんかもそうですが、敵ながら好きなキャラクターなので、討ち取られてしまうところはあんまり見たくない…
でもいずれはそういうときが来てしまうのでしょう(;_;)

カイネと河了貂がどうなるのかも気になるところ。
河了貂は、次はちゃんとやる、と言ってましたが、二人とも仲良しですからね~。
たぶん、お互いが戦場にいる女性同士ということで親近感を持っているのではないでしょうか。
そして河了貂の武器がいまだに吹矢だということにビックリ。
いまだにムタから譲り受けた吹矢を使っているのでしょうか?
カイネに思い切り避けられてましたね(^^;

~個人的ベストシーン~

31巻のハイライトは何といっても政が蕞の民の士気を高めたシーンです。
数あるキングダムの名シーンの中でも屈指のシーン。
相手は三万の一般人ですから、それを強制ではなく自ら戦う気にさせるというのは、よほどの力量が必要になるはずです。
昌文君も政の後ろで涙していましたが、政は確かに普通の王様ではない感じでしたね。
まぁ始皇帝ですからね。

ところで蕞の民や飛信隊の連中は、大王である政の顔を見たことが無かったようですね。
それどころか声も聞いたことが無い。
王様って本当にいたんだな、なんて言っている隊員もいました。
これがこの頃の普通の感覚なんだとしたら、その大王様にタメ口をきいている信や河了貂はそうとう浮世離れしていることになりますね(^^;


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