キングダム30巻「麃公(ひょうこう)の死と政の出陣」感想

ここからは1巻づつ(^^;

~あらすじ~

函谷関では秦軍が優勢であり、このまま合従軍を跳ね返すかに思われたが、ふいに崖の上から楚兵たちがなだれ込んでくると、秦軍は函谷関の裏を取られた形になり一気に劣勢に陥った。
突如として現れたこの楚兵たちは媧燐が放った別動隊の五千の精兵であった。

楚兵たちは秦兵たちを突破し、函谷関の門前まで辿り着くと、門を塞いでいる大岩を次々に引っ張り出す。
反対側には呉鳳明が率いる魏軍が待機しているため、門を塞ぐ大岩が取り除かれれば魏軍がなだれ込み、函谷関は陥落することになる。

大岩は手際よく取り除かれていき、残りあと二つとなり、もはやこれまでかと思われたその時、ここにいるはずの無い王翦軍が現れ、楚兵たちを蹴散らして函谷関の門前を取り返すことに成功した。
これにより媧燐の作戦は失敗に終わり、函谷関は間一髪のところで守られたのであった。

王翦軍と相対していたはずのオルド軍は、この日の午前に主力を全滅させられたことから慎重にならざるを得ず、山中に築かれた砦に留まっており、王翦軍の動向を把握できていなかった。
オルドは王翦将軍に心理戦で負けていたのである。

そして函谷関を攻める手立てを失った合従軍は燕軍を除いた全軍が開戦前の位置まで退却を始める。
この日で函谷関を落とすつもりだった合従軍の将軍たちは、函谷関の突破が極めて難しくなったことを悟った。

翌日、劣勢となった合従軍では本陣で会議が開かれていた。
会議の席で春申君は、李牧が合従軍を離れたことを皆に説明し、各軍は精兵一千を李牧の元へ送るように、との指示をした。

その頃、咸陽では函谷関が守る北道ではなく、武関が守る南道に敵が侵入したとの報告が入っていた。
報告によれば、敵の数は三万から四万でこれを率いているのは李牧、とのこと。

どうやら李牧は、開戦してから誰にも気づかれないように少しづつ趙兵を南道へ送り込んでいたようで、不測の事態に備えていたようである。

咸陽へ向けて着実に進んでいる李牧軍であったが、途中、背後から攻撃を受ける。
攻撃を仕掛けたのは麃公軍であり、そこには飛信隊の姿もあった。

麃公将軍は、李牧の元へ向かう部隊が起こしたわずかな砂ぼこりを遠目にも見逃さず、李牧の意図を見抜いたのである。

麃公軍を迎え撃つ李牧は「流動」という高等戦術を用いるが、麃公将軍はこれを本能的に見切り、ついに李牧の前に立つ。
しかし李牧が動じることは無かった。
李牧の後ろには龐煖がいたのである。

麃公将軍は部下たちに李牧を討ち取るように命じると、自身は龐煖との一騎討ちに臨んだ。
しかし龐煖は強く、麃公将軍は劣勢を強いられる。
麃公将軍は斬り合いながらも龐煖と語らい、その中で龐煖を「己の中の大いなる矛盾に気付かず一人で悶えているただのど阿呆」と評し、龐煖の本質を見抜いた。

麃公兵たちは奮闘を続けていたが、多勢に無勢で、次々に討ち取られていき、ついには麃公将軍が一人だけになってしまう。
この窮地に必死の形相で近づいてくる飛信隊の姿に気が付いた麃公将軍は、信に咸陽へ向かうように指示する。
そして信に向かって自身の盾を投げてよこした。

改めて龐煖に向き直った麃公将軍は、やはり貴様は何も感じていないのだな、と言い最後の立ち合いに臨む。
龐煖の放った矛の一撃により麃公将軍は致命的な傷を負うが、麃公将軍は死ぬ前に龐煖の左腕を折り、討ち取られていった。

この様子を見た信は怒りと悲しみに駆られ、仇を討つべく龐煖の元へ向かおうとするが、壁に制止され、断腸の思いで咸陽へと向かう。

一方、咸陽では麃公将軍が討ち取られたとの報告を受け、動揺が走っていた。
さらに呂不韋が合従軍との和睦のために政の首を狙っており、咸陽はまともな戦ができる状態では無い。
もはや打つ手なしかに思われたが、なんと大王である政は自らが出陣する意思を示す。
政は南道の最も咸陽よりの場所にある「蕞」(さい)という城で李牧軍を迎え撃つつもりであり、昌文君らと共に出陣していった。



~感想~

まず、王翦将軍の活躍によって函谷関が陥落しなかったことはなによりです。
王翦将軍の活躍はめざましく、オルドが気の毒になるほどでしたね。
しかし李牧のおかげで、全てが無に帰す可能性が出てきました。
あの男は本当に頭がキレます。
まさか、ちょっとずつ兵を送り込んでいたとはね。
しかもその数は四万!
四万はきついですな~。
咸陽には呂不韋もいますから、一枚岩となって戦うこともできませんしね。

そして、この李牧の策に気が付いた麃公将軍が、なんと討ち取られてしまいました(T_T)
討ち取ったのはまたしても龐煖。
王騎将軍に続いて麃公将軍までも…
もう勘弁してもらいたい。

ところで麃公将軍は龐煖を「己の中の大いなる矛盾に気付かず一人で悶えている阿呆」と言っていましたが、これは龐煖が自分の強さを実感できない人間で、強くなればなるほど孤独になって自分の力を感じられなくなっている、ということなんでしょうかねぇ。
もしそうなら、龐煖は龐煖でかなりキツイ状況です。
信に討ち取られるまで、この状況にずっと身悶えていることになりそう。

そして案の定、呂不韋が裏切りました。
まぁもともと仲間ではないのですが、緊急事態ですから協力してくれるのではないか、とちょっとでも思っていた僕がバカでした(;_;)

しかし我らが政は果敢に出陣していきます!
最後の見開きページはカッコよくて身震いしました(^^)
なんか大王の纏っている甲冑は、気品があってカッコいいですね。
カラーで見るとよりカッコいい。

合従軍との戦いはこれからいよいよ山場を迎えるわけですが、なんかこれまでもず~と山場だったような気がします(^^;

~30巻の個人的ベストシーン~

151ページで麃公軍副官の岳牙(がくが)が、多勢の敵による槍に突き刺されて討ち取られますが、その際に麃公将軍に笑みを見せて死んでいったシーン(;_;)
また、それを受けて麃公将軍が「先に行って待っておれ、こ奴(龐煖)の首を手土産にすぐに行くぞぃ」と、これもまた笑みを見せて答えたシーン(T_T)
これはお互いに、もう助からないことを悟っており、おそらく龐煖を討ち取ることができないことも分かっていたのだと思います。
それでも二人は満足している表情を浮かべており、ここまでの道のりに満足して死んでいったのだと思います。
二人の思いや関係性が数コマで手に取るように分かり、悲しいシーンでしたが、すごくいいシーンでした。


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